犬の下痢や嘔吐の症状や原因、治療法について獣医師が解説|茨城県つくば市のうめぞの動物病院
茨城県つくば市・土浦市・牛久市・つくばみらい市・阿見町の皆様、こんにちは。
茨城県つくば市にあるうめぞの動物病院です。
今回は、犬の下痢や嘔吐について、病気の症状や原因、治療法について解説していきます。
当院では、犬の下痢や嘔吐の治療を行っておりますので、お悩みの場合は一度ご相談ください。
下痢や嘔吐とは
犬の下痢や嘔吐は、消化器系の異常な状態を示す症状です。
下痢や嘔吐の症状
下痢は、犬の便が通常よりも水っぽくなり、頻繁に排便する状態を指します。
嘔吐は、犬が食べたものを吐く行為であり、胃や消化管の異常を示すものです。
下痢や嘔吐の原因
下痢は、食物の消化不良、細菌やウイルスの感染、ストレス、食物アレルギーなどさまざまな原因によって引き起こされることがあります。
嘔吐は、食物の過剰摂取、異物の摂取、消化器の炎症や感染、胃腸の機能障害、ストレスなどの原因によって引き起こされることがあります。
下痢や嘔吐の診断
《下痢の診断》
①便検査: 便の細菌バランスや、寄生虫やその虫卵を顕微鏡で確認します。例えば、ジアルジアなどのように少数感染のため、顕微鏡検査でも判明しない場合には、PCR検査によって感染の有無を調べたり、駆虫薬を用いて試験的駆虫を実施します。
②血液検査: 体内の炎症や脱水症状の程度などを評価するために実施します。その他、膵臓から分泌されるはずの消化酵素が不足していないか(膵外分泌不全症)、腸から蛋白質を上手く吸収できていないか(蛋白漏出性腸症)検査も実施します。
③その他の検査: 必要に応じて、X線や超音波検査などの画像検査や内視鏡検査などが行われることもあります。例えば、リンパ管拡張症は、特徴的な画像が見られるため判明することがあります。また、リンパ腫などといった腫瘍も腸の構造が変形していることで判明することがあります。
《嘔吐の診断》
①画像検査:レントゲン検査や超音波検査を実施します。レントゲン検査では、胃や腸の中にある誤食した異物を検出できることがあります。また、超音波検査では、腸閉塞を起こしている腸の中の異物や、ヒモ状の異物も検出できます。また、超音波検査では、正常な構造を変形させてしまっている腫瘍や、膵炎や重度の胃腸炎などで現れることがあるコルゲートサインを検出できます。
②血液検査: 血液検査は、炎症の他、腎臓、肝臓、膵臓などの内臓の状態や、脱水の評価をするために実施します。
下痢や嘔吐の治療
《下痢の治療》
①寄生虫:糞便検査で寄生虫を検出した場合には、その寄生虫に効果のある駆虫薬を投薬します。また、寄生虫の感染が判明していない場合にも、試験的に駆虫薬を投薬する場合もあります。
②腸内細菌バランスの改善:プロバイオティクスや、整腸剤を用いて乱れた腸内細菌バランスを改善します。
③食事療法:食事反応性腸症(FRE)は食事療法で改善する慢性腸症のことで、慢性腸症の中で最も発生頻度が高い疾患です。食事療法では加水分解食、新奇蛋白食を使用します。
また、低アルブミン血症を引き起こしている蛋白漏出性腸症の場合は、低脂肪食や超低脂肪食(手作りの低脂肪食)を給餌することでアルブミンの値が顕著に改善するケースが多いです。
④抗菌薬療法:抗菌薬反応性腸症(ARE)は抗菌薬を使用する事で顕著に消化器症状が改善する慢性腸症のことです。抗菌薬はメトロニダゾールなどを使用します。
⑤その他:食事療法や、抗菌薬療法を実施しても改善が見られない場合は、超音波検査や内視鏡検査を実施して、リンパ腫などの腫瘍がないか検査します。リンパ腫などの腫瘍なども見つからない場合には、免疫抑制剤反応性腸症(IRE) と仮診断します。免疫抑制剤反応性腸症(IRE)とは、食事や抗菌薬に治療反応を示さない慢性腸症のことで、ステロイドなどの免疫抑制薬でのみ消化器症状が改善する疾患です。
《嘔吐の治療》
①消化管内異物の摘出:誤食により胃や腸に異物がある場合には、全身麻酔下で内視鏡で摘出したり、開腹手術で異物を摘出します。
②内服薬での治療:制吐剤や、胃酸抑制剤を用います。同時に点滴療法を実施することもあります。
③食事療法:食物アレルギーを疑う場合には、アレルギー食に変更します。
④その他:胃腸炎、膵炎以外に肝臓、腎臓などにトラブルが起きている時にはその原因に対して治療を行います。
症例報告
犬種
シュナウザー
年齢
5か月
どんな症状だったか
下痢の症状に対して、他院で整腸剤や、食事療法を行っても下痢が続いている状態でした。
どんな治療をしたか
糞便検査で、顕微鏡では寄生虫は検出できませんでした。しかし、PCR検査でジアルジアに感染していることがわかりました。ジアルジアに効果のある駆虫薬を投薬して下痢は改善しました。